川久保 知美1)4) 高橋 博達2)4) 伊藤 嘉彦3)4) 山田 雄司3)4)
1)浜松北病院 2)浜松市リハビリテーション病院 3)中東遠総合医療センター 4)静岡JRAT
【はじめに】
令和6 年1 月1 日に石川県能登半島において地震が発生し、甚大な被害が生じました。私は、同年2 月23~25 日、医師1 名PT2 名ST1 名の計4 名、静岡では9 隊目となる災害リハビリテーションチーム(以下、JRAT)の一員として支援活動をしましたので、以下に報告いたします。
【派遣地域】
珠洲市:震度6 強の揺れを観測し、家屋の倒壊や津波の影響を受け断水が続く、高齢化率が52.8%(令和6 年1 月26 日時点)の地域でした。活動場所は、福祉施設、小学校、公民館、集会場等の避難所で、45 か所に1,276 人が避難していました(令和6 年2 月22 日時点の県庁資料より)。
【活動内容】
1.個別訪問
介入が必要と判断された受援者や保健師から依頼のあった要配慮者に個別訪問し、嚥下機能評価や、履物や避難所内の動線の移動評価、入浴頻度の確認、装具の適合評価をしました。
2.避難所の環境評価
仮設トイレやトイレカー、仮設シャワーテントの環境を確認し、福祉用具の必要性の評価をしました。また、避難所が変更となった要配慮者の環境・動線評価をしました。
3.集団体操の提供・指導
避難所生活での身体活動量等を聞きとり、生活不活発病予防のために珠洲市が推奨しているシルバーリハビリ体操を集団または個別に提供・指導をしました。
4.業務調整(ロジスティクス)
支援活動における業務調整や情報管理全般を行いました。避難所概況の情報更新や保健師からの依頼に対する日程や時間調整、受援者への支援内容の経過記録や課題、次回訪問日などの記録等を行いました。
【感じたこと】
断水が避難所生活に及ぼす影響は非常に大きく、排泄や入浴に支障をきたしている受援者が多いと感じました。特に、高齢化率が高い地域では、身体機能や動作能力の評価による環境設定が生活をしやすくさせ、JRAT が早期に介入する意義があると感じました。また、断水が長期に渡ることで、仮設住宅への移住や地域リハビリテーションの再開には時間がかかり、生活不活発病を引き起こす受援者が多くなるだろうと予測できます。珠洲市ではシルバーリハビリ体操が普及しており、地域住民がシルバーリハビリ体操指導士として定期的に集団体操を実施している避難所があることに驚かされました。全国で統一したリハビリ体操が普及、定着されることで、災害が起きた際には、どこの県であってもスムーズに支援を開始することができ、早期から生活不活発病予防に繋がるのではないかと感じました。
非常に苦労したことは、調整業務でした。支援初日にマニュアルや避難所、受援者情報を確実に把握することができれば、時間を有効に使うことができ、支援活動に専念できると感じました。また、保健師等の他団体との情報共有を積極的に行うことができれば、受援者への精神的な負担を軽減でき、支援がしやすくなると感じました。石川JRAT は、自らが被災者であるにもかかわらず金沢市、七尾市の拠点だけでなく、珠洲市の前線本部でも担当者が継続的に地域JRAT を受け入れ、調整業務を継承してくれていました。それでも、日々の調整業務には更なる人員が必要だと感じました。
最後に、避難所は男女共同であるため、プライバシーを十分に確保できるとは言い難い状況で、仮設トイレや仮設シャワーテントは、男女共用や男女がすぐ隣り同士の環境でもありました。更衣や身体清拭を行うためのプライベートルーム用テントは、避難所の一角に設けてありました。私自身も、支援活動前はトイレや入浴、就寝場所等に不安を抱えていました。しかし、支援者の環境には十分配慮してくださり、支援に専念することができました。断水が長期に渡る事態では、女性視点での環境評価が支援に繋がる可能性があり、女性JRAT も積極的に活動すると良いと感じました。
【おわりに】
この度は、石川JRAT 本部の方をはじめ、運営に携わってくださったすべての関係者の方に感謝申しあげます。